第2章 輝石の額当て
「モゾモゾすんなよ。変な気分になる。」
「……はい…。」
抱き締める事は辞めないようだ…。
仁美は天元の太い腕から逃れる様に顔を上げた。
見上げた天元はこのまま寝るのか、目を瞑っていてた。
「……………。」
目を瞑っていても綺麗な顔立ちだと仁美は思った。
仁美は天元が何故自分にこんなに執着しているのか分からなかった。
何故なら、天元との出会いもそれほどいいモノでは無かったからだ。
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【ー2年前ー】
「ようこそいらっしゃいました。」
「………………。」
2年前、まだ藤屋敷を任されたばかりの頃。
天元とその奥方達と出会った。
「えっ?!目が赤い!鬼?!」
鬼の特徴的な目の赤さの仁美に、須磨は天元の腕にしがみ付いた。
「……人間です…。」
仁美がそう言うと、まきおと須磨は仁美の肌や口元を確認する様にペタペタ触っていた。
「……良かった。人間だ。」
納得した須磨は仁美を離してくれて、意気揚々と屋敷の中に入って行った。