第8章 4枚の婚姻状
「早くその不快な藤の花から出てこい。お前から戻ってくるなら逃げ出した事は何も言わない。」
仁美は無惨の言葉を聞いて不思議だった。
彼が見せる温情が自分に向いていないと分かるからだ。
なら何故このような言葉を使うのか…。
無惨は仁美が自ら命を断とうとしている事に気がついているのだろう。
仁美の意思は無惨へと繋がり、また彼の意思も仁美へと繋がる。
焦っているのだ。
あの無惨が。
仁美を失うことへの焦りが手に取るように分かった。
「…旦那様、鬼は旦那様と繋がり、呪いによって旦那様に支配されていると聞きました。私が旦那様の名前を口にしても死なないのは何故ですか?」
「…お前は鬼では無い。」
仁美はその言葉を聞くと、ゆっくりと顔を俯かせた。
「鬼では無い私は…あなたにとってどんな存在なのでしょう…。」
仁美の言葉を聞いて、無惨は口角を上げた。
「お前はたった1人の私の花嫁だろう。」
そう言って仁美の額に口付けを落とす。