第8章 4枚の婚姻状
仁美は眠れない日の為に睡眠薬を貰っていた。
それを口に含んで義勇と分かち合う。
義勇は何を飲まされているか分かっていたと思う。
それでも抵抗はしなかった。
最後まで見ていた赤い目がゆっくり閉じるのを見送ると、義勇の目もまたゆっくりと閉じた…。
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暗く何も見えない自分の意識の闇の中。
仁美は一人待っていた。
こうして彼を待つのはいつぶりだろうか。
「仁美…。」
囁かれる名前と共に後ろから抱き締められる感触。
仁美はゆっくりと振り返った。
そこにはいつも月明かりの下見上げていた赤い目があった。
「…旦那様…。」
仁美はそう呟くと触れている彼の腕にそっと手を置いた。
無惨の顔は嫌悪感で歪んでいた。
仁美の体から香る嫌な匂い。
藤の花の匂い。
彼の瞳孔が細くなり、顔に青筋が浮き出た。