第8章 4枚の婚姻状
初めから死のうとした訳ではない。
鬼から逃げていたのも生きたいと思ったからだ。
実弥に連れられて、外の世界はとても広いと知った。
触れ合った人たちは皆温かった。
幸せが何かとはまだ分からなかったけど。
夜が怖く寝られなくても、そんな毎日でも仁美は生きていたかった。
だけど。
それは叶わない望みだったようだ。
仁美を抱き締める義勇の腕に力が入ると、同じように仁美も彼を抱き締めた。
本当に……。
このまま彼の腕の中で一生を過ごしたいと願ってしまうくらい。
彼が好きだ。
抱き締めながら絶対に離さないと言う義勇の言葉を聞きながら、仁美はゆっくりと目を瞑った。
彼の腕の中でその夜が白ける頃。
仁美はゆっくりと体を起きて薬を口に含んだ。
「…仁美。」
体が離れた仁美の腕を取り、義勇は再び仁美を抱き締める。
仁美は薬を含んだまま義勇に口付けをする。
お互いに口の中に苦い味が広がり同時に舌が絡み合う。