第8章 4枚の婚姻状
「あなたより先に逝くことをお許しください。」
義勇の頬を両手で触れて仁美は言った。
仁美の赤い目から流れた涙は義勇の顔に落ち、彼の涙と混ざった。
「…ダメだ…許せない。」
唇が震えて声が掠れていた。
だけど強く仁美を抱き締めてその腕の中で仁美の体温を感じた。
暖かい…。血の通った人間の体温だった。
「…私はもう鬼舞辻無惨と繋がってしまいました。いつ結界が破れて連れ戻されるか分かりません。義勇様…。鬼殺隊が鬼舞辻無惨を追い詰めた時に私が側に居たらあの人は迷うことなく私を食うでしょう。光陽に焼かれない体を手に入れるために。」
無惨と繋がった時に、仁美は初めて彼の意識の中で自分の生い立ちと、彼が何のために仁美を生かしていたのか知った。
自分の体の中に無惨の細胞が入っていることも。
仁美を側に置いていたのは彼なりの愛もあったかもしれない。
しかしそれは彼の平穏な中での話しだ。
自分が窮地に追いやられた時に、無惨は躊躇なく自分を食べると仁美は知っている。