第8章 4枚の婚姻状
抱き締めている義勇の肩は少し震えていて…。
仁美はやはり彼の背中を撫でるように抱き締めてしまう。
義勇は一瞬いつものように、仁美が受け入れてくれたと思った。
だけど今回だけはいつものように彼を受け入れるわけはいかなかった。
–––––私には、もう時間がない…。
そっと手を離し、包まれていた彼の腕から抜けた。
仁美のその行動は、義勇にとっては驚くことだった。
いつも口付けを受け入れて、最後は自分の腕の中で眠たそうに瞼を落とす仁美しか見ていなかったから。
戸惑いを隠せない義勇に、仁美は小さく息を呑んだ。
「義勇様…。私の意識は今鬼舞辻無惨と繋がっています。…そして、こうなった時のことは耀哉様と決めていました…。」
鬼のように赤い縦の瞳孔が揺れていた。
「……何を決めたんだ?」
義勇の声は震えていて、もう答えを知っているかのようだった。
仁美はゆっくりと目を伏せて、最後に義勇に言った。