第8章 4枚の婚姻状
仁美の声は穏やかで、本当にそう望んでいるかのように聞こえた。
義勇は目を伏せて、ぎゅっと顔を顰めた。
触れている仁美の手に己の手を添えると、そっと彼女の手に指を絡める。
「…不死川もお前のことが好きなのか?」
義勇は仁美の手を握りしめて、溢れるような声で仁美に聞いた。
仁美は義勇の言葉を聞いて、瞬きを一つだけする。
「…実弥様は、私のことが苦手で避けてますね…。」
仁美は普段の実弥を思い出しながら、とくに声色も変えず答えた。
その答えが意外で、義勇は伏せていた目を上げて仁美を見た。
そして思い詰めたように、また目を細める。
「なら、仁美の側にいるのは俺でもいいだろう。」
好きあっているのではないなら…。
彼女を好きな自分が側にいることを望むのは傲慢だろうか。
「… 仁美。」
情けないと分かっていても、義勇はやはり縋るように仁美を抱き締めてしまう。