第8章 4枚の婚姻状
大きな快楽が走ると、仁美は体を大きく震わせた。
同時にお腹の奥にあつい熱が流れてくる。
「あっああっっ…!」
キツく抱き締められて、全ての熱を受け止めた。
耳元で天元の荒い呼吸を聞きながら、仁美は薄っすらと目を開けた。
お館様から藤屋敷を任されて、自分は何を成したのだろう。
ギュッと天元の背中を掴んだ。
命を賭けて鬼と戦う隊士の為に自分に何が出来るか。
「…… 仁美……。」
吐息が口付けに飲み込まれた。
天元は何度も仁美の名前を呼ぶ様に唇を合わせる。
ずっとこの腕に抱かれていると思っていた。
それが少しの同情からでも、縋れば側に居てくれるこの腕が必要だった。
じゃ無ければ、きっと仁美は恐怖に負けて鬼の元に帰っていた。
そこが恐怖の元凶なのに、童磨の腕も猗窩座の腕も、無惨の言葉でさえ。
あんなに安心出来る居場所なんて無かったから。
好きだった。愛していた。
それが本当の愛かも分からないのに、確かに仁美の愛はあの地獄にあった。