第8章 4枚の婚姻状
自分の科は誰でもなく。
自分が咎める事だと気が付いたらから–––。
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「…………。」
「義勇様。鴉も飛ばさずどうしました?」
伝達も飛ばさずに来た義勇に、仁美は笑顔で迎える。
しかし、彼の顰めた顔はそんな笑顔では崩れなかった。
義勇は無言のまま仁美に近付くと、そのまま彼女を抱き締めた。
「……義勇様……。」
屋敷の庭で仁美を抱き締める義勇に、屋敷の中から小さな悲鳴が聞こえる。
「…人目がありますから、部屋に行きましょうか…。」
仁美は宥める様に彼の背中を撫でた。
少し気を許した彼の顔が緩んだのを仁美は見逃さない。
仁美は義勇の手を取ると、そのまま屋敷の中に彼を招く。
義勇は触れた仁美の手を握って、黙って仁美の後をついて行く。
仁美は義勇が突然屋敷に来たことに、心当たりはあった。
ここ最近の求婚状の話を耳にしたのだろう。