第1章 半々羽織
「仁美。そんな言葉を聞きたいんじゃない。」
義勇は仁美の顔に触れると、彼女を再び自分に向けた。
「…駄目です。」
「駄目じゃ無い。」
義勇は顔を俯かせようとする仁美を押さえて、彼女に口付けをした。
仁美は少しの抵抗を見せるが、あの夜の様に義勇の口付けには応えてくれている様だ。
「っ義勇様っ…っ。」
義勇の名前を呼ぶが、やはり唇が離れる度に、義勇は何度も唇を押し付ける。
彼は本当に後悔していたのだ。
のんびりと自分の気持ちと向き合ってしまい、彼女に何も伝えていなかった事を。
もう同じ後悔はしたくなかった。
「…っあ……。」
仁美の声が漏れたのは、仁美の長襦袢の中に、義勇の手が入ってきたからだ。
その時まで仁美は自分がどんな姿だったか気付いていなかった。
結いあげていた髪は解かれて、長襦袢一枚で義勇と一緒の部屋に居たのだ。
夫婦とてこんなこんな露わな姿で無防備にいる事は無いだろう。