第1章 半々羽織
義勇は仁美の体を抱き締めて、大きく息を吐いた。
彼もまた、彼女が無事だった事にやっと安心感が湧いてきた。
「…間に合って良かった。…俺はまたすぐに仁美に会えると安易な期待で仁美と離れてしまった。」
それを凄く後悔したのだ。
仁美に会えなくなってしまったら。
その強い恐怖に、仁美の姿を確認するまでずっと襲われていた。
「仁美。俺はもう後悔はしたく無い…。必ず鬼を全滅させて君が夜に安心して寝られる世界を叶える。」
そして仁美の体を少し離し、仁美の顔を見た。
「その時には仁美に俺の側にいて欲しい。」
真っ直ぐに仁美を見て義勇はそう言った。
仁美は義勇の目に、自分に対する恋慕の気持ちが篭っている事を知っていた。
知っていたから…。
仁美は義勇から目線を逸らした。
「…私は義勇様には相応しくありません…。」
仁美なら、そう答える事も義勇は分かっていた。