第1章 半々羽織
「……この場所は鬼に見つかってしまったので、すぐに出なければなりません…。」
義勇の背中に手を回し、仁美は震える声で伝えた。
「…私を…産屋敷様の屋敷に……。」
「…分かった…すぐに移動しよう…。」
幸いにももう夜明けが近かった。
この時間からなら鬼の襲撃は無いだろう。
しばらくすると隠達も集まり、屋敷の被害状況を確認したが幸いにも被害は無かった。
使用人達は隠達に。
仁美は義勇が抱き抱えた。
「冨岡様。私達で仁美殿を運びます。」
「いや、いい…。」
義勇は仁美を隊員には渡さず、むしろ彼女を抱いている手に力を入れた。
「仁美は俺が運ぶ。」
大切なモノを抱え込むように、義勇は仁美を腕の中でしっかりと抱き締めた。
そんな義勇を見た事が無かったから、隠は驚き口を開けたまま何も言えなかった。
「…仁美。疲れたなら寝てていい。俺が側に居るから。」
義勇は腕の中で衰弱している仁美に声をかけた。