第1章 半々羽織
「仁美様は部屋に籠って、結界術を張っています。」
震える声で彼女は話すが、義勇が来た事に安堵の表情を見せていた。
この結界術は仁美が張っているのか…。
義勇は仁美が寝ずに夜を過ごしているもう一つの理由を知った。
いざとなった時に、この屋敷を守れるのは彼女しか居なかったのだ。
鬼達は仁美を探していた。
奪い返す為に。
仁美は鬼達に狙われていたのだ。
何故?鬼達はこんなに執拗に仁美を狙っているのだろう。
しかしそれを考えるより、義勇は仁美の安否の方が心配だった。
「仁美!!!」
「……義勇様…。」
結界の札が無数に貼っている中心に仁美が居た。
義勇の顔を見て仁美は疲労に疲れた白い顔で安堵の笑みを浮かべた。
すぐに義勇は仁美を抱き締めた。
「……無事で良かった……。」
仁美を抱き締めると藤の花の香りがした。
仁美は義勇の腕の中で、やっと体の緊張を解いた。