第7章 鬼の宴
「自然の摂理になぞるなら…私は貴方と夫婦になるなんて初めから無理な話だったんですね…。」
童磨は仁美の血を美味しいと啜っていた。
彼の口元は何度も仁美の肌を見て牙を向けていた。
喰うことが出来ずに紛らわせる様に情欲を貪っていた。
無惨も童磨の様に喰らい付きたい衝動を情欲で紛らしているのでは無いか。
それは夫婦とも、ましてや愛とも言えない。
ただ本能の衝動に従って仁美を側に置いているだけだ。
「…お前は違う。」
無惨は抱いている仁美の肩に顔を埋めた。
血を流していなくても、いつもと同じ甘い香りだった。
「お前はこの先私の側で天命が尽きるまで過ごす事になるだろう。それが許された唯一の人間だ。」
無惨は人の心情に寄り添う言葉をかける時がある。
親を殺してしまった理由を肯定し罪悪感を和らいであげた鬼もいる。
それがどんなに人道から外れた事でも無惨は否定しない。
人が決めた人道などに共感すら得ないからだ。
そして仮初の共感を与えて彼が得られるのモノは、その者の心からの信頼だ。
そうして育てた鬼は強く育ち無惨をある程度満足させる。