第7章 鬼の宴
体力が限界になった時に仁美は倒れた。
このまま倒れて日が落ちた山中の方が危険だった。
獰猛な動物か鬼か。
先にこのひ弱な体を見つけるのはどっちだろう。
仁美は……。
鬼より先に動物に見つかりこの体を食い散らかせてくれないかと願いながら目を瞑った。
あの鬼達は決して仁美を食いはしない。
だけど嬉々として仁美の体を貪るその姿は。
鬼の宴だ。
ー
ーー
ーーー
どの位気を失っていたのだろう。
仁美はカサカサと木の葉が重なる音で目が覚めた。
ザッザッと草道を歩く音も聞こえる。
ああ……夜が訪れたのか。
鬼の足が目の前に現れ、仁美はうつ伏せのまま目線だけを上げた。
月の逆光の中。赤い目が仁美を見下ろしていた。
「……私から逃げたいのか?」
久しく聞いたその声に仁美はゆっくりと目を閉じた。
同時に涙が頬を伝った。
「……いいえ……。」
私はもう……。
生きていたくない。