第6章 虹色の目の無神論者
「まさか鬼が人間を食ってる事に今更怖がってるの?」
今更だと言う様に童磨は首を傾げた。
その通りだった。
こんな光景……。
恐ろしく思わないはずが無い。
そんな気持ちを目に込めている仁美に童磨は笑った。
「鬼から産まれて…その鬼に育てられてさぁ…。今更本当に知らなかったって傷付いて泣ける訳?俺たちが仁美を食わないのはあの方の意思があるからで、空腹ならそこら辺の人間で満たされてだからだ。君が生き延びれてたのはただ他に空腹を満たしていたかだぜ。」
泣いていた訳じゃ無い。
だけど童磨の言葉を聞いて見開いた目に涙が溜まった。
「………叫んでもいい…?」
「どうぞ。泣き叫べばいい。」
仁美の言葉に童磨はニッコリ笑った。
「ああああああああーーー!!!!!」
「あはは。仁美。本当に君は可愛い娘だ。」
奇声を上げて暴れ回る仁美を童磨は抱き締めた。
童磨の腕の中で今まで出した事が無いほどの声を出した。
「人間の癖に鬼に守られて生き延び……ああ…愛した旦那様は人を食う鬼だ。」