第1章 半々羽織
再び仁美の名前を聞いたのは寛三郎からの伝令だった。
『デンレイ!!デンレイ!!キリノサトノフジヤシキニオニガシュウケツ!!』
「!!!!」
霧の里。仁美が住んでいる藤屋敷だった。
義勇が居る場所から山2つ超えた距離だった。
義勇は寛三郎の伝令を聞いてすぐに仁美の元に走った。
走っている最中にずっと仁美の顔が頭に浮かんでいた。
何故自分はまた会えるなどと安易に考えていたのだろうか。
この世界には無情にも鬼で溢れかえっているのに。
何度人の死を目の当たりにしても慣れていた訳ではなく無い。
ただ義勇の仁美にまた会いたいと言う強い気持ちが、その現実を鈍らせてしまっていたのだ。
夜が恐ろしいと寝る事が出来ない仁美。
今きっと彼女は震えて助けを待っているだろう。
不死川が一度仁美を助けたと言うなら。
今度は自分が誰よりも先に仁美を助け出したい。
どうか俺が着くまで無事でいてくれ。