第1章 半々羽織
義勇は仁美をキチンと布団に寝かせた。
彼は寝ている仁美の顔をしばらく眺めていた。
そしてゆっくりと腰を上げて、仁美だけを部屋に残して屋敷を出た。
義勇はそれからしばらくは仁美の事を忘れられなかった。
月を見れば彼女の赤い目を思い出し、藤の花の匂いを嗅げば彼女の柔らかい体を思い出した。
離れたくないと思った気持ちが仁美に対する恋心だったと気付くのにそんなに時間がかからなかった。
浮だった話など良く他の隊員が話しているのを聞いていて、自分にはまだ想像出来ない事の様に思えていた。
どこぞの茶屋の娘が可愛いとか、村田などは良く言っていた。
彼が顔を赤らめて話している感情がよく分からなかったが、今なら身をもって分かった。
村田は惜しげなく茶屋に通ったと言う。
今義勇も仁美に会いたくてそんな気持ちだった。
この任務が終わったら……。
何度もそう思いながら、中々仁美の元に通えない日々が続いていた。