第6章 虹色の目の無神論者
まるで変質者を見る目だった。
仁美の立場からして間違いでは無い。
「……………。」
無惨は怪訝な顔を童磨に向けた。
言われた事も出来ない無能を見る様な目だった。
しかし、彼を煩わせているのは童磨だけでは無い。
無惨の仁美を抱く手に血管が浮き出た。
彼はまた、同じ様に涙を流して懇願する仁美に煩わしたさを感じていた。
「私が童磨に言った事が理解出来なかったのか?」
無惨のその声に怒りが含まれている事は仁美にも分かった。
彼は仁美の頭の回転の良さが気に入っていた。
彼を不快にせず、彼の心情を考え、彼の求める答えだけを伝える。
仁美は無惨の望みを理解出来なかったのでは無くて、受け入れる事が出来ないのだ。
そんな当たり前の小さな主張ですら、彼の機嫌を損ねると分かっていても。
「…分かっています。ですが私は嫌です…。」
涙を流してキッパリと伝える仁美を見て、無惨の瞳孔が小さくなった。
(…あ…死んだな…。)
無惨を見て、童磨は仁美が彼に殺されると悟った。