第6章 虹色の目の無神論者
童磨はまるで仁美が物分かりの悪いかの様に話した。
目の前の鬼は物腰が柔らかく微笑んでいる。
まるで人間の様に傷付いている娘を慰めようとしている。
しかし、夫以外に体を触られ、夫に会いたいと言う仁美の気持ちを理解出来ていない。
「ねぇ、そんないい匂いさせて泣いたら俺だって我慢出来なくなっちゃうよ。」
童磨は仁美が流す涙を唇で拭いながら、甘い声を出してくる。
仁美は更に気分が悪くなった。
会話をしているのに全然伝わらない事に嫌悪感を覚える。
鬼に人の感情など分からない。
情欲を帯びながら口付けをしようとしてくる童磨に、仁美はとうとう叫んだ。
「旦那様!!!」
仁美が体を反らして叫ぶ姿に、童磨は一瞬キョトンとした。
その瞬間、仁美の体は童磨から離れた。
誰かが仁美の体を抱き上げると、仁美はやっと拒否する様に瞑っていた目を開けた。
今自分の体を覆っている腕が誰のモノか分かったからだ。
「……何故涙を流している?」