第1章 半々羽織
「…仁美。嫌ならこれ以上何もしない。俺は君が眠るまでここに居るから。」
義勇は解いた仁美の髪に自分の指を通した。
絹の様に滑らかな感触に、本当にどこにも汚れた所なんて無いように思った。
義勇に髪を撫でられて、布団の感触に仁美の瞼がまた重くなってきた。
眠たそうに目をパチパチさせる仁美に、義勇は笑って言った。
「ここを立つが、また仁美に会いに来る。」
「……義勇様……ご武運を……。」
陽が完全に登り、白けた空は一気に明るくなった。
その日差しに当てられながら、仁美はゆっくりと目を瞑った。
仁美の小さな寝息が聞こえてくると、義勇はもう一度仁美に口付けをした。
目の前の女性は起きていても寝ていても美しかった。
朝日の光で見た仁美の顔は、夜に見る時と違ってとても白く見えた。
まるで陽の光を浴びた事の無い白い肌に、義勇は胸が痛くなった。
仁美は本当に鬼の様に夜に生き昼は眠る様だった。