第1章 半々羽織
「っ……う……待って…っ…。」
仁美がそう義勇を止めた時には、もう彼は仁美を布団に組み敷いていた。
無我夢中で仁美に口付けをしていた義勇は、自分がいつの間にか仁美を組み敷いていた事なんて気が付かなかった。
布団の上で自分の体に押し込められている仁美を見て、やっと義勇は正気に戻った。
「……すまなかった…。」
義勇は慌てて仁美から体を起こした。
離れた義勇の寝巻きを掴んだのは仁美だった。
「…後悔するのは義勇様ですよ…。私の体は汚れています。」
仁美はそれだけ言うと彼の服から手を離した。
その言葉は義勇にズシリと大きな重石を付けた様な気分にさせた。
「…何故汚れている?こんなに綺麗なのに。」
勿論義勇が女性を綺麗などと表現するのは初めての事だ。
女性を見て、そんな風に見た事なんて一度も無いから。
義勇は仁美の髪に触れると、綺麗に結われていた髪を解いた。
布団に横になるなら、その結いは邪魔だろうから。