第5章 傲岸不遜の鬼
「っ…あっ…。」
口付けに夢中で無惨に身を任せていたから、仁美は自分の体から力が抜けていくのが分からなかった。
ガクッと膝が折れた時に、無惨が仁美を支えていたから床に崩れる事は無かった。
思わず掴んだ無惨の腕を辿って、仁美は顔を上げた。
紅梅色の目が変わらず自分を見下ろしていて仁美は思わず顔を俯かせた。
一度唇が離れたら先程までの自分の行動に気恥ずかしさを覚えたのだ。
そんな仁美の心情を分かっていたので、無惨は仁美の体を支えると、ベットに彼女を座らせた。
「…明日の夜、祝言をあげる。」
……随分と人間ぽい言葉が出たと自分でも思った。
そんな事をふと考えたが、顔を上げた仁美を見て、そんな気分もまたどうでも良くなった。
仁美は一瞬驚いた顔をした。
そしてその後に嬉しそうに笑った仁美を見て、無惨はまた仁美の頬に唇で触れた。
どうやら私はこの1人の人間を愛でるのが楽しい様だ。
十二鬼月にさえ滅多に与えない寵愛を、この娘に向けている。