第5章 傲岸不遜の鬼
「…あ…私……。」
仁美は急な言葉に顔を赤くさせ、動揺を隠せなかった。
嬉しいと、言葉にする事も出来ずにただ目を泳がせていた。
仁美の唇に無惨の指が触れた。
彼の指が唇の形をなぞると、仁美の口元は少し震えた。
「あ…旦那様…。」
仁美がそう呟くと、無惨は仁美の唇を塞いだ。
最初は軽く触れる口付けだった。
それは何度か彼から受けていたから、仁美は目を瞑っていつもの様に彼の唇の動きに身を任せた。
恋人同士はこうして口付けをするモノだと知っていたので、彼から唇を合わせる度に、仁美の胸は高鳴っていた。
「っ………!」
心地良い触れ合いが変わったのは、彼の舌が唇を割って口内に入ってきたからだ。
「っ!!!」
入ってきた舌が自分の舌と絡み、更に深く唇を押し付けられた時に、仁美の体は強張った。
ちゅっくちゅっと、舌を動かせ度に水気の浴びた音が響き、仁美は彼の舌から逃げる事しか出来なかった。
「うっ……はぁっ…。」
少し唇を離されて一息付くと、すぐにまた唇を塞がれて同じ様に口内を攻められた。