第5章 傲岸不遜の鬼
幸い仁美は聡い人間だったので、彼が教えた言葉も文字もすぐに覚えた。
相変わらず鬼の母親は話す事をしなかったが、仁美からどの様に生活をしているか聞く事が出来た。
「食事はお母さんが用意してくれてる。昼間はお母さんは外に出ないから私も寝て、夜にたまに外に出る事がある。」
母親の鬼は仁美の世話は良くしていたらしい。
仁美を風呂に入れ、髪を梳かし結いもした。
仁美が着る服は無惨が届けていた為、この生活に不便はない様だった。
定期的に仁美の血を採取して調べても、やはり仁美は人間のままだった。
だけども、仁美が成長するにつれて、彼女から放たれる甘い匂いは強くなった。
しかし、稀血のその香りは食欲では無かった。
仁美を見ていると、無条件で全てを受け入れられる様な。
そんな奇妙な感覚だった。
12歳を過ぎた頃には、無惨が届ける本や新聞、文集など、仁美はなんでも読む様になっていた。
「……鬼ってどんな生き物ですか?」