第5章 傲岸不遜の鬼
童磨に言われて、急に思い出した記憶だった。
漆黒の髪の毛に栗色の目の娘。
弱いただの人間。
ああ…そう言えばそんな娘が居たな。
言われなければ思い出しもしない記憶だった。
「あの娘に触れると何故か心地よくてね…。」
白い肌は絹の様に滑らかで。
痛みに流す涙さえ、流れ落ちるのが勿体なく唇で拭った位だった。
感じた事の無い幸福感を、仁美に触れる度に感じていた。
(だけどアレは俺の感情じゃない…。)
あの感情はあのお方のモノだ。
猗窩座も同じ感覚を覚えていたはずだ。
他の鬼も。
だから仁美を傷付ける鬼は居なかった。
「…また会いたいなぁ…。」
童磨は仁美を思い出しながら笑みを浮かべる。
人間の命など短いから早く見つけてあげないと。
ああ…。でもそれはそんなに遠くないのかもしれない。
「昨夜、あの娘が繋がった様だ。」
「は?」
「おや、猗窩座殿は感じなかったのか?あのお方に近い鬼しか感じ取れ無かったか…。」
童磨の惚けた言い方に、猗窩座は拳を強く握った。