第1章 半々羽織
月が明るくなる空の色に染まるまで。
「私と居ても退屈ですよ?」
仁美は世間の流行り話や、面白く話せる会話も無かった。
「こうして座っているだけでいい。」
それは逆に気を使わせるだけではないだろうか…。
「では、義勇様の話を聞かせて下さい。」
「………………。」
困った事に、義勇もまた会話を楽しむ事が苦手だった。
結局2人はポツリ、ポツリと口数少なく話をして、殆ど黙って月を見ていた。
その内夜が明けて、陽の光が窓から溢れる頃にようやく義勇は自分が仁美から離れたく無いと理解した。
この陽がもう少し高く上がったら、ここを出る準備をしよう。
チラッと仁美を見ると、眠気が襲ってきたのか仁美はやっと虚ろ虚ろと目を細めていた。
目を伏せている仁美の顔をジッと見てみた。
……人のまつ毛はこんなにも長いものだろうか。
針が乗りそうなそのまつ毛に自然に手が出た。
義勇の手が瞼に触れたのを感じて仁美は顔を上げた。