第4章 赫き炎刀
先程と一緒で、仁美の頬を撫でながら名前を呼んだ。
「……昨日はありがとう。仁美のお陰で命を繋げられた。」
杏寿郎は仁美の目を見ながら言った。
杏寿郎の顔に罪悪感や仁美への憐憫の色が見えなくて、仁美は少しだけ安心した。
実弥の様に彼の心の傷にならなくて良かった。
「……その目は戻らないのか?」
「…きっとそうなります…。」
その時はやはり少しだけ杏寿郎の目が歪んだ。
『貴方のせいでは無いです。』
仁美がそう言おうとした時に、声を出したのは杏寿郎の方だった。
「順番が逆になってしまって申し訳無い……。仁美。俺と夫婦になろう。」
「……………え?」
一瞬仁美の時間が止まった。
……冗談?いや…彼の顔は真剣そのものだ。
しかもその眼差しには、仁美への恋慕の気持ちも見れた。
仁美は真っ直ぐ自分を見てくる太陽な男を見て目を細めた。
夜の暗闇しか生きて来なかった仁美にとって、眩しくて思わず目を瞑ってしまう様な人だった。