第4章 赫き炎刀
薄れていく意識の中見ていた仁美は、紅梅色の目ではあったが、瞳孔は丸かった。
仁美の今の姿に鬼を連想するには十分だった。
しかし、冷静な判断など出来ない位の疼きが体中を蝕んだ。
気を抜けば仁美に喰らい付き、体を押し倒しそうだった。
「……杏寿郎様……。」
仁美は掴まれた腕に痛みを感じて顔を歪ませた。
「っ……っ。」
すまん。とこの手を離すはずだった。
なのに声が出なく、仁美を掴む手は彼女から離れようとしなかった。
「……はぁ……。すまない……。」
この体の疼きが仁美の所為だと言う事は分かっている。
妖しい術を使われて、無様に情欲を曝け出している事に屈辱感はあった。
しかしそれより強い情欲と……。
血を飲ませていた時の仁美の顔は、杏寿郎より辛い顔をしていた。
この結末を仁美が望んでいない事は分かった。
そして彼の体を治したのも間違い無く仁美だった。
「……杏寿郎様……大丈夫です……。」