第1章 半々羽織
「俺に抱かれていると安心するのか?」
「…ええ…とっても…。義勇様も実弥様の様に強いんですよね?」
「……………。」
義勇は仁美を抱き締めている心地よさにしばらく浸っていた。
しかしその仁美の言葉に段々と眉間に皺が寄った。
「……俺は今、不死川と比べられているのか?」
それはとても気分が良くない。
「はっ。まさか不死川も仁美をこうして抱き締めたのか?」
「……………答えたくありません…。」
またも仁美から否定の言葉が出なくて義勇は更に顔を顰める。
「……義勇様見て下さい。」
仁美は義勇の肩越しに窓の里を見た。
「今日も月が綺麗です。」
仁美に言われて月を見るがやはりいつもと変わりない。
月を見ている仁美を、義勇は布団の上に座らせた。
そして仁美の肩を抱くと再び自分の体に押し付けた。
そうしてしばらく2人で黙って月を見上げていた。
「……仁美。」
「はい。義勇様。」