第4章 赫き炎刀
杏寿郎を確認すると、顔には血の気が無く真っ白だった。
弱い呼吸を何度もしていて、医者が来る時間すら待てないとすぐに分かった。
「……この部屋から人払いして。」
仁美はお湯や消毒液を用意している使用人達に言った。
使用人達は仁美の言葉に驚愕した。
しかし仁美は眉一つ動かさず、無表情で布団に寝かせられている杏寿郎を見下ろしていた。
その仁美を見て、使用人達は何も言わずに部屋から出て行った。
部屋の周りに人気がない事を確認して、仁美は顔を上げて天井を見上げた。
そして深呼吸する様に大きく息を吐いた。
「……恨まないで下さい…杏寿郎様……。」
そう呟くとゆっくりと目を閉じて、医療用のメスを手に取った。
杏寿郎は薄れる意識の中その気配に薄っすら目を開けた。
彼の目に紅梅色の目が暗闇の中光っているのが見えた。
そしてその目の色より鮮やかな鮮血が杏寿郎の顔にかかった。
途端に部屋中に広がる甘い香りに、痛みは薄れ体が痺れてくるのが分かった。