第4章 赫き炎刀
「義勇様はいい人ですよ。」
「……あっそぉ…。」
仁美の言葉に不服そうだ。
それでも2人は言葉を交わした。
実弥に怒られる事も、たまに笑顔を見せる実弥も。
仁美は目を細めて笑顔で答えた。
そうして少しずつ、2人は空いていた時間を埋めていった。
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その日の鎹鴉は緊急事態を告げていた。
仁美はすぐにこれから藤屋敷で起こる事態に備える。
鎹鴉の伝令のすぐ後に、大きな音を立てながら藤屋敷に数人の隊員が押し寄せてきた。
仁美はすぐに門を開くと彼らを受け入れる。
何人かの隊員に体を支えられた男が目に入る。
炎の様な焔色の髪が、灯りの少ない夜に映えていた。
隊服は黒くて分かりづらかったが、肌や地面に滴っている血の量で、彼が瀕死の状態だと分かった。
藤屋敷を任された時、応急処置の心得は会得していた。
そして藤屋敷の主として、町から医者を呼び出す権限も与えられている。
町医者に駆け込めない隊員達にこうして処置を施す事はよくあった。