第9章 たいせつなこと
恥ずかしそうに言うマキアに、悪戯心が芽生えたギルヴァ
「…なぁ…またキスしていいよな?」
「え?……な…なんでですか?…」
「そういう可愛い顔されたら我慢できなくなるんだよ…」
ギルヴァは言いながらマキアの頬を撫で優しく顎を掴んで顔を上げさせる
「ま……待ってください……」
「…待たねぇ……」
そう近付くギルヴァだが
亜空間を開いたマキアは両手で一通のラベンダー色と白色のグラデーションの封筒をギルヴァの顔の前に出した
封筒にある封蝋は蜂蜜色でマキアのイニシャルの刻印があり、封筒の端には、《マキア・ミへーラフィ》と名前が書かれている。
「おい……」
「えっと……これを……ギルヴァ様にお願いしたくて……」
キスを遮られて、少しムッとしながらもギルヴァは受け取り、封筒の表面の方を見ると
《シンディ家の皆様へ》
「……書いたのか?」
頷くマキア
「昼過ぎに仕事した後に、いくつか手紙の返信の必要があって……その時に一緒に書いたのです。…お養母様からお許しは頂けましたが…ギルヴァ様のお力を借りたくて……」
「まぁ…ミへーラフィ侯爵の目はあるからな……いいだろう。」
ギルヴァは人差し指と中指で手紙を持ち、
魔力を込めると黒色の魔法陣が2つ展開されて、手紙を挟むように付与されて手紙が浮かぶ
「それで……念の為にしとくか……」
そう呟くギルヴァに、
ギルヴァの膝上に乗ったままのマキアが首傾げる
ギルヴァはマキアに微笑み、マキアが離れないよう片手を腰に添え
手紙を浮かばせてる方の空いてる片手で指を鳴らし
「…ソオブラ」
そう呼んだギルヴァの後ろにある影が揺れ動き
影から飛び出て、ギルヴァとマキアの横に現れたのは、漆黒色のノースリーブのつなぎを着てフードを被っている灰色の肌をした魔族の男が片膝をついて頭を下げていた。
亜空間とかでなく、いきなり魔族の男が現れたように見えたマキアは肩を揺らし驚く
そんなマキアを安心させるかのように腰にあった手で背中をポンポンと優しく叩くギルヴァ