第9章 たいせつなこと
ノック音にギルヴァとエンツォが目を向けたのは、マキアが居る部屋に繋がりの出入口
パーテーションがあってマキア側の部屋は見えなかったが
「ギルヴァ様……ちょっとよろしいでしょうか?」
聞こえたマキアの声に……
ギルヴァはエンツォに目配せし、
エンツォは魔法を使って散らかっていた書類を手元に纏めると、
一礼し部屋の扉の方へ向かった。
「あぁ……いいぞ。入って……」
ギルヴァの声にパーテーションを動かしてギルヴァの部屋に入るマキアと同時に、エンツォが出て行った扉の音がした。
「あ……お話し中でしたらごめんなさい……誰かいらしたのでは?」
遠慮しながら扉の方を見るマキアに、ギルヴァは立ち上がり近寄りながら
「今居たのは、俺の執事だよ。仕事を寄越せって言ってるのに、親父がやっちまうから無いって言われたんだよ。」
「執事さん……ご挨拶せず、すみません」
「いいよ。紹介するのは後でも」
そう言ったギルヴァに、落ち込んだ様子のマキア
すると、いきなりマキアを抱き抱えたギルヴァ
「きゃあ!」
「やっぱり軽いな…」
片腕で軽々と抱き抱えたままのギルヴァ
「お、下ろしてください!ギルヴァ様!」
「何故だ?別にいいだろ。俺と2人っきりだし。」
そう言いながらギルヴァは抱き抱えたまま
「話があったんだろ?……だから執事を下がらせた。」
「執事さんに挨拶くらいできますわ。」
「挨拶なら明後日の開会パーティー前の時にでもいいだろ。マキアの自然な姿を見るのは、俺とメイドくらいでいいんだよ。」
な?って言いながら微笑むギルヴァだが
顔を真っ赤にでもするのかと思ったら、
マキアは表情が曇っているのが見てわかった。
「マキア?」
名前を呼ぶギルヴァ
マキアは言葉が見つからずに下を向いてしまう
「マキア……出掛けるから付き合ってくれ。」
「え?……出掛ける?今からですか?」
「あぁ……いい所連れてってやる。」
突然の提案をしたギルヴァに、マキアは頷いた。