第1章 記憶 ※暴力表現有
「え…」
悲鳴を上げる間もなく吹き飛んだメイ、そして何者かが近寄って彼女の胸倉をつかみ、持ち上げた。やつには見覚えがある。鬼頭家の人間だった。
「っぐ…ぅ…」
痛みと苦しさに呻くメイ。
やめろ、やめてくれ。そう思うのに声が出ない。助けたいのに格子が邪魔だ。
「供物には近寄んなって何回も言ったよな?なんで守れねぇんだ?あ?地主の娘だからって大目に見てもらえるとでも思ってんのか?」
「ちがう…っ…仲良くなりたかっただけよ!どうしてその子を閉じ込めるの!?」
「あぁ?こいつの髪と目見えねぇのか?こいつは忌み子なんだよ、いざというときにこいつを生贄に使えるように飼ってんだ」
「…そんなの許さない!シロはわたしの大事な…っぐ!…」
そこまで叫んだところで、腹部に拳を叩き込まれ、メイはぐったりと動かなくなった。
それを見た瞬間、これまで感じたことのない激しい感情が湧き起こり、ようやく声を出すことができた。
「…メイに、手を出すな!」
しかし、
「…一丁前に友達なんか作ろうとしたてめぇのせいだろ」
一言だけ吐き捨てるように告げると、そいつはメイを担いで立ち去った。
守れなかった。助けられなかった。
それどころか、僕のせい?僕が彼女を拒絶していたら、彼女が傷つけられることはなかった…?
胸が苦しい。締め付けられるようだ。
僕が悪い。僕がメイを傷つけた。
痛いくらい拳を握りしめても、胸を押さえても、この痛みが消えることはなかった。