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【ダンダダン/邪視】甘くて暖かい

第1章 記憶 ※暴力表現有


それからというもの、何日たってもメイが現れることはなかった。
いつかひょっこり「遊びに来たよ」とやってくるかと思って、できるだけ格子の外を見るようにしていたけどだめだった。
僕のせいだと言われたけど、もう一度、一目でいいからあの声で、あの顔で、笑いかけてほしかった。
「あまい」気持ちが恋しい。



そして、季節が変わった頃。
僕は突然牢から出された。
山の様子がおかしいとしきりに大人たちが話しているのが聞こえる。

僕はそのまま鬼頭家のやつらに引き渡され、山に連れられ、棒に括り付けられて身動きを封じられた。
やがて、山から赤いものが流れ出し、徐々に僕に迫る。
熱い、熱いよ。

みんなと遊んでみたかった。メイにも会いたかった。
そう思ったとき。

「いや!いや!!シロ!!!」

待ち望んでいた彼女の声。
首だけで声のした方向を見やると、僕に駆け寄ろうとしたであろう彼女が地面に押さえつけられて泣き叫んでいた。

やめて。メイに乱暴しないで。
そう思うのに、身動きが取れなくてまた僕は助けに行くことができなかった。

赤い液体がいよいよ僕の足元まで来たとき、縄に火がついて僕は燃え上がった。

遠くのほうでメイの悲痛な叫び声が聞こえる。
意識が途切れる寸前に見えたのは、彼女が周囲を振り切って、この熱の中に飛び込む姿だった。
「わたしもついていくから」
そう言って笑いかけてくれたような気がした。
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