第1章 記憶 ※暴力表現有
そして、さらに数日後。
「シロ、遊びに来たよ。」
「しろ?」
「あなたのあだ名よ。考えてきたの。髪が白いから、シロ。そのまんますぎる?」
しろ。しろ。嫌な感じはしない。
「しろでいい」
「よかった。ねぇシロ、今日はいいものを持ってきたの。」
そう言うと、メイは袂から小さな包みを取り出して膝の上に広げた。紙のようなものに包まれている何かがころんと乗っている。
メイはさらにその紙を開いた。中には丸くて色のついたもの。それをつまむと僕の口元に寄せる。
「はい、お口開けて。」
食べ物なのだろうか。僕が口を開けるとそれが放り込まれた。
しかし、噛めないほど硬い。
「かたい」
「あ、初めて食べた?そのまま飲み込んだら駄目よ、口の中でころころ転がして、ちょっとずつ溶かしながら食べるの。こうやって」
そしてもう一つの包みを開け、自分の口にも放り込んだ。
言われたとおりにやってみると、知らない味が口の中に広がった。なんだか頭がふわふわする味。
「甘くておいしいでしょ?父様がおみやげに買ってきてくれたの。飴っていうのよ。」
あまいというらしいその味を、メイはニコニコと嬉しそうに食べている。おいしい、そう思うと自然と口元が緩んだ。
メイは僕のそんな様子を見てもっと嬉しそうにした。
「シロにもよろこんでもらえてよかった。」
そうして二人でゆっくりと飴を味わった後、また「約束」と小指を結んでメイは帰っていった。
一人暗い牢に残された僕はぼんやりと考える。
あまいというのは、彼女が笑いかけてくれたときの感じによく似ていた。あれもあまいと言うのかな。