第3章 新生活
「こっちも気になる?あげたいところなんだけどこれホットなのよね。冷たいの注文しようか?」
「いや、よい」
なーんだとでも言いそうな顔をし、今度は店内の様子をキョロキョロと見回す邪視。
あまり待たせないようにと私も普段より早めにミルクティーを飲み干した。
「ごちそうさまでした。美味しかったね。」
「…メイ、これからここへ来るのは我といるときにしろ」
「そんなに気に入った?わかったわ。また一緒に来ようね。」
そろそろ出よっか、と荷物を持って立ち上がると邪視も私の後ろに着いてくる。
お会計を済ませ、お店を出ようとしたとき、ふと視線を感じて振り向くと、顔なじみの店員さんが遠目にこちらを見ていた。
今日は怖がらせて申し訳なかったなと思い、軽く会釈をして私はお店を出た。変な噂が立ちませんように。
邪視にも人を怖がらせたりしないように言い聞かせておかないとね…
特に目的地を定めるでもなく、次はどこへ行こうかと考えながら駅前の通りを歩く。
邪視は様々なお店やビルが立ち並ぶ光景に興味津々のようで、しきりに辺りを見回している。
「外というのは広いのお、お主はここによく来るのか?」
邪視が尋ねてくる。
「そうね。休みの日はたまにショッピングモールに行ったりするわ。洋服を見たり、本屋さんに寄ったりするの」
「ふむ…もしお主が行きたいなら付き合うぞ」
意外な言葉に驚いたけど、せっかくなのでお言葉に甘える。
「ありがとう。実は新しいコートが欲しかったんだけど、今日は試着できないだろうし……あ、そうだ!ちょっと小物屋さんに寄ってもいい?」
「構わん」
私は駅ビルに入っている可愛らしい小物屋さんに向かった。店内にはアクセサリーや雑貨が並んでいる。
「邪視、何か気になるものはある?」
邪視は周囲を見回しながら言った。
「特にはないが……これは何じゃ」
そう言って邪視が指差したのは、小さな星型のブローチだった。シンプルだけど品があり、どこか温かみのあるデザインだ。
「これ?ブローチよ、襟やスカーフなんかにつける装飾品。」
「これは?」
次に邪視が指差したのは、淡い紫の石が嵌ったイヤリングだった。
「あら、綺麗。あなたの目の色と同じね。」
手に取ってみると、ドロップ型の品の良いデザインで、窓から差し込む光を受けて淡く輝いている。