第3章 新生活
「デート…というほどのものではないですけど……えっ、邪視!どうしたの?だめよそんな怖い顔したら」
「ひっ…」
答えに困って邪視を見ると、邪視は店員さんを睨みつけていた。
なぜか殺気まで漏らしている。気付いて怯える店員さん。
まずい、ジジくんもここに来るかもしれないのに、怖いお客さんだと思われちゃう。
「すみません、この子すごく人見知りで!」
「…あ…っい、いえ!こちらこそ失礼いたしました!ご注文の品すぐにお持ちします!」
咄嗟に言い訳したものの、足早に去っていく様子を見るに手遅れかもしれない。どうしよう。
「邪視…何か気に障った?大丈夫?」
「…あれがお主に向ける目が気に食わんかった」
「そんな…ただ注文取りに来てくれただけよ?笑顔で対応してくれるのはどこのお店もどの店員さんも大体そうなんだから。私もバイト中は参拝の方に笑顔で接してるわよ。」
「…」
説明するも、不服そうな邪視。でもまだ現代の生活を始めたばっかりだから仕方ないのかもしれない。
ゆっくり教えて慣らしていかなきゃ。
しばらく待つと、注文したものがいつもと違う店員さんによって運ばれてきた。ベテランそうな女性の方。
「お待たせいたしました、タルトとバナナジュース、ロイヤルミルクティーでございます。ごゆっくりどうぞ。」
店員さんが邪視の方をチラッと見て去っていったのでまた怖い顔をしているのかと思って慌てて目をやったけど、邪視は出てきた食べ物を目を輝かせて見つめていた。どうやら機嫌は直った様子。
「美味しそうね、邪視。ああ、崩れてこぼれちゃうからフォークで食べたほうがいいわよ。」
早速タルトを手づかみで口に運ぼうとする邪視を制止し、フォークを手渡す。
使い方がわからないかもしれないので一口分手本で切ってあげた。
「こうやって一口分ずつ切って食べるのよ。」
「面倒じゃ。手でも食える。」
そして結局手で持って食べ始める邪視。一口が大きいからか、意外と溢れずにあっという間に食べきってしまった。
そしてバナナジュースも手に取り、一口飲むと気に入ったようで、一気飲みする勢いで飲み干す。
「これうまいじゃ!」
喜ぶ邪視の様子を見ながら私もロイヤルミルクティーを飲む。
先に完食してしまった邪視は私の飲み物も気になったようで、カップをじっと見つめている。