第2章 再会の日
【メイ視点】
生まれて初めて寝坊した。
いつもはアラームが鳴る前に目覚めるし、ちょっとした物音で起きてしまうのに。
揺すられてウトウトと目を開けると、モモちゃんとおばあちゃんが私たちを覗き込んでいた。
「朝ごはんできてるよ」というモモちゃんの声で急速に意識が浮上し、慌てて邪視を起こす。
邪視は起きた後も「服を着るのは嫌じゃ」「顔を洗うのは嫌じゃ」と駄々をこねていたけど、ジジくんを遅刻させるわけにはいかないので一生懸命説得して支度を進めてもらった。
私も同時進行で支度を済ませ、眠たがる邪視の手を引いてやっと食卓についた。
「ごめんなさい、お待たせ」
これを食べると邪視はジジくんに戻る。
数日間のお別れ。昨日ずっと一緒にいたからちょっと寂しいけど、また会えるから。
「じゃあ、邪視、また次の土曜日にね。」
邪視は悲しそうな顔をする。ごめんね。
「もっと早く会えんのか」
「今日は木曜日だから、2日後よ。すぐに会えるわ。私も寂しいけど、そういう約束だから仕方ないの。」
「約束か…」
呟いたかと思うと、邪視は小指を立ててこちらに向けてくる。
「ん」
一瞬なんだろうと思ったけど、すぐにピンときた。指切りね。きっと前の私としていたんだろう。
同じように小指を立てて邪視の指に添える。
「2日後、約束ね。おやすみ、邪視。」
邪視が満足気に穏やかな笑みを浮かべた後、朝ごはんを食べる前に顔の模様が消え、髪が赤く染まった。ジジくんだ。
どうやらちゃんと自分でジジくんに身体を返したみたい。
「今あいつ自分で引っ込んでったよね?絶対嫌がって駄々こねるから最悪お湯かけるつもりでいたのに…」
モモちゃんも驚いてる。
「…お!戻った!おっはようございまーす!!朝から美女に囲まれてウーレスィー!!」
「おはよう、ジジくん。昨夜は身体貸してくれてありがとう。おかげでたくさんお話できたわ。身体の方は大丈夫?」
「うん、大丈夫!むしろなんか久々によく寝た〜って感じ!」
モモちゃんとおばあちゃんは目を見合わせて意味深な笑みを浮かべる。
「まあ、そうだろうねー。めっちゃ寝てたもん」
「え、なんだよその顔。何かあったの?」
「まあ、まず食え。遅刻するぞおめぇら」
「「「やばい!!いただきます!!」」」
慌てて食べ始める学生3人組。朝から忙しい。