第2章 再会の日
手を握るだけで我慢してもらえることになったものの、シングルサイズに体格が良い邪視と2人で入るには狭く、身体の距離はあまり取れないまま身を寄せて眠るしかなさそうだ。
仰向けになると少しはみ出てしまうので、横向きで丸まっておこう。
「お主は手も小さいのお、寝とる間に握り潰してしまいそうじゃ」
ボソリと呟かれた言葉に想像して身震いする。
本当にうっかりそうなってしまいそうで怖い。
「や、やめてね…?」
「気をつける」
別の意味で緊張して眠れなくなりそうなので、話題を変える。
「前の私ってどんなだった?」
「…我とあまり年頃は変わらんかったように見えたが、遊びに来るたびに違う着物を着て、髪も整えてあって、身なりの良いおなごじゃったな」
「へぇ…」
「くるくると表情がよく変わってのう、我の世話を焼いては何やら楽しそうによく笑っておった。今のお主と同じじゃ」
懐かしそうに目を細める邪視。
世話焼きの気質がずっと受け継がれていることがおかしくて、私も思わず笑みを零した。
「……あの時は牢の格子が邪魔で、お主から我に触れることはできても、我からお主に触れることはできんかった。お主が鬼頭家のやつに傷付けられたときも助けられんかった。それどころか、我と仲良くしようとしたせいでお主が傷付いて、挙げ句一緒に死んだ。我のせいじゃ…」
「邪視…」
天井を見つめ、握った私の手を親指で擦りながら吐露された言葉に胸が痛む。
大丈夫よ、と言うように空いている方の手で邪視の手を包む。
「あなたのせいじゃないわ。私があなたに会いたくて、…喜んでほしくて、あなたのところに行ってたのよ。私にとって大事なお友達だったの。…今の私ときっと同じ気持ちだったはずだから。」
邪視の顔がこちらを向く。感情の読めない顔をしている。
「…一緒に死んだのはなぜじゃ」
「それは…わからないけど。あなたがいなくなって、1人遺されて生きていくのが耐えられなかったのかもね。」
ふいっと顔を天井に戻してしまう邪視。
「…我はお主がおらんようになって数百年耐えたぞ」
「邪視…」
「ついていくと言っておったのに」
「邪視」
「遅い」
たまらなくなって、私は邪視を抱きしめた。
しばらくじっとしていた邪視だったが、やがて腕の中でモゾモゾと寝返りをうち、抱きしめ返してくれた。