第2章 再会の日
「ところでさぁ、お姉ちゃんとあんたってどんな関係だったの?」
「随分ベッタリよね、懐いてるにしても限度があるっていうか…もしかして恋人同士とかだったのかしら」
モモちゃんとアイラちゃんがおそうめんを頬張る邪視に問いかける。
「貴様らには関係のないことじゃ」
冷たく言い放つ邪視。私以外にはまだ懐く気はないらしい。
「私もそれちょっと気になるかも。大事な人だったということしかわからないから…」
私が聞くと、仕方ないといった様子でぽつりぽつりと話してくれた。
「…何という関係かは知らんが、お主は我が生きておった頃、唯一牢の中の我に話しかけて、笑いかけて、触れて、遊んでくれた人間じゃった」
「牢?」
物騒な単語に思わず口を挟んでしまう。
「そうじゃ。我は…ずっと牢で暮らしておった。鬼頭家のやつらは我を"くもつ"と呼んでおったな」
くもつ、って供物?
邪視が…?
「それでのお、いよいよ火山が噴火するというときに我は括り付けられて燃えてしもうたんじゃが、お主は…我についていくと言って炎に身を投げたんじゃ」
家の中が静まり返った。みんな箸が止まっている。
邪視と昔の私?にそんな過去が…
一番に口を開いたのはアイラちゃんだった。
「一緒に死のうとするほどなんて、メイさんにとってもかけがえのない存在だったのね、なんかちょっとドラマチックかも。」
「確かに。当時のお姉ちゃんにとって邪視ってどんな存在だったんだろうね」
冷えた空気が少し和み、また各々おそうめんを啜り始める。
邪視がじっとこちらを見ている。
…残念だけど、私には当時の記憶が残っていないみたいだから、その問いに答えてあげることはできない。でも。
「…当時の記憶はないけど、すごく大事な人だったのはわかるわ。あなたのオーラを見たとき、思わず飛び出して行っちゃったくらいだもの。」
そう言うと邪視は、ふ、と穏やかな笑みを見せた。
そんな顔もできるの。
「…メイ、おそうめん食わせろ」
再び催促された餌付けに奔走し、おそうめんがなくなる頃にようやく気付いた。
私、食べてない。