第2章 再会の日
その後も邪視は散々ごねていたが、結局火曜の夕方にタカクラくんと遊んだ後と、土曜日の1日を私と過ごすことで我慢してくれることになった。
そして、ジジくんの温情で今日はこの後も朝まで一緒に過ごさせてもらえることに。
とりあえず安全が確保できたということで、みんなで本殿に置いていた私の荷物も運んで、ようやく一息つくことができた。
でも、困ったことになった。
「邪視、私みんなの傷治さないと…」
「駄目じゃ」
「ご飯作ってくるから…」
「駄目じゃ」
邪視が私から離れようとしないのだ。
ずっと膝の上でがっちりホールドされている。
みんな最初は引き離そうとしてくれてたけど、危険があるわけではないので(絵面はかなり危険だけど)まあいいかという空気になってしまい、気まずそうに時折チラチラとこちらを見る。
正直ちょっと恥ずかしい。
「しかし、メイは大人になったのに小さいのぉ。」
「あなたが…というかジジくんが大きいだけよ。」
「我はもっと大きい!」
「そっか、すごいね」
よしよしとお腹に回る腕をポンポンしてあげると、嬉しそうに肩口に顔を埋めてくる。
そんな様子の邪視をぽかんと見つめる一同。
そりゃそうよね、あんなに凶悪で手のつけられない暴れん坊だった妖怪が、まるで人が変わったように大人しくなったのだから。
身体は大きいのに中身はまるで幼子のようで私も調子が狂う。
でもそんな様子を可愛いと思っている私も少なからずいる。
そう、私は甘えられることに大変弱い。
ついつい言われるがままに甘やかしてしまうし、本当はほぼ成人の男性にすることではないけど、頭を撫でたり抱きしめたりしたくなってしまう。
「おーい邪視、ワシの孫にセクハラしたら即除霊だからな。」
邪視の様子を見かね、大きなザルに盛られたおそうめんを抱えてきた星子おばあちゃんが忠告する。
「せくはらとは何じゃ」
「相手の許可を得ずに勝手に身体を触ったりすることだ。特に胸とか下半身とか気をつけろよ。メイも嫌なら嫌って言え。」
「まあ…下心はなさそうだから大丈夫だと思います…絵面がまずいだけで…」
力なく答えると星子おばあちゃんは「だめだこりゃ」という顔をした。