第2章 再会の日
痛い。苦しい。
力加減をまるで知らない抱擁。
しかし、背中に回された手が震えている。
危害を加えるつもりがないという確信が私にはあった。
モモちゃんと星子おばあちゃんに「大丈夫」と目配せすると、私は大きな背中にそっと手を回した。
邪視はビクッと肩を跳ねさせる。
「……メイ…メイ…!…こんなところにおったか…」
絞り出された声も震えている。
切なげに呟かれた私の名前。
「ようやくお主に触れられる。これからはずっと一緒じゃ」
そしてゆっくり身体を離す。やっと息が吸えるようになった。
手を握られたまま呼吸を整えていると、混乱した様子の一同が駆け寄ってくる。
「メイおめぇ、邪視のこと知ってんのか」
「…はっきりと覚えているわけではないんですけど…記憶の奥底に染み込んでいる感じです。オーラに覚えが。今の私じゃなくて、もっと前かもしれません。」
私が言うと、邪視は悲しそうな顔をする。少し胸が痛んだ。
「我を覚えとらんのか」
「…ごめんなさい」
そんな悲しそうな顔しないで。
何と声をかければいいのかわからず、未だ握られたままの手をぎゅっと握り返した。
「まあ良い、お主にまた会えただけで充分じゃ」
そう言うとまた腕の中に私を閉じ込める。苦しい。
「ちょっとお姉ちゃん苦しがってんじゃん!離れろ!……クッソ全然離れねぇ!!てか裸でくっついてんじゃねぇよ!」
筋肉に溺れそうな私を見かねてモモちゃんが超能力で引っ張るが、力が強すぎてびくともしてない。
縋るような背中をそっと撫でながら言う。
「邪視、そんなに強くしなくても逃げないわ。」
「…我のあだ名も覚えとらんようじゃな。」
「ごめんなさい、忘れてしまったみたい。」
私たちの様子を黙って見守っていた星子おばあちゃんが口を開いた。
「感動の再会は後にしろ。で、邪視、条件飲むのか」
「嫌じゃ」
「毎週火曜日メガネが遊んでくれるんだぞ?」
「嫌じゃ!せっかく会えたのにメイとおれんではないか」
駄々をこねる邪視。
しかし平日はジジくんも学校があるので頻繁に身体を明け渡すわけにはいかない。
「じゃあ、土日のどちらかにもう一日変わってもらうのはどうかしら?」
「毎日一緒じゃないと嫌じゃ」
「それは難しいわよ、ジジくんにも生活があるのよ」