第7章 地雷
「柳瀬」
朝の甘い時間が脳内フラバして。
思わず顔が緩む。
けど。
こちらへと足を伸ばす柳瀬の表情はあたしのそれとは全然違くて。
怒ったような。
いや、確実に怒ってるよねこれ。
やっぱスマホかぁ。
ひとりになるなとか言われてたし。
「柳瀬、ごめん違くて、今まで友達といて…………」
「騙してた?」
「え」
あれ。
雰囲気。
なんで。
こんな怒って…………。
「ずっと騙してたのか、俺のこと」
「ちょ…………っとごめん、意味わかんない。スマホのことなら謝るから。家に、忘れちゃって。今まで友達と飲んでて」
あれ。
どーしよう。
柳瀬これ、本気で怒ってる。
つい数時間前の電話ではいつもとなんら変わりなかったのに。
なんで。
これ。
纏う空気が痛い。
喉から抜けるカサカサした空気に息が詰まりそうになって。
タクシーの中にいる暁へと視線を向けると。
暁は心の底からため息を吐き出した。
「いいから乗れば。営業妨害だろおまえら」
「さっさと行けよ。俺は莉央ちゃんと話がある」
「…………そんな状態のおまえを、莉央とふたりになんてするかよ」
ふー、て。
ため息ついて、暁がお金を渡しすぐに降りると。
何事もなかったように、走り出すタクシー。
「迎え呼んだから。帰るぞ」
「どこに?」
「噛み付くなよ雅。おまえ、莉央怯えてんのわかんねぇ?」
暁の言葉にあたしへと視線を向ける柳瀬に。
一瞬びく、て。
怯えた。
「…………もう別に。どうでもいい」
「やなせ…………」
どーしよう。
なんで。
柳瀬怒ってる。
ちがう。
なんか違う。
たぶん何か誤解してるんだ。
とかなきゃ。
誤解。
どーやって?
わかんない。
だって何を誤解してんのか、わかんない。
でも解かなきゃ。
誤解。
どーやって。
何が。
わかんない。
なんで。
怒ってる。
柳瀬、すごく怒ってる。
なんで。
なんで。
…………怖い。