第7章 地雷
《side 莉央》
「朝からにやけ顔、ウザいんだけど」
ゼミで使う資料を纏めていれば。
ゼミの4年生。
高校の時から仲良くしてる後輩が、半ば呆れ顔でため息ついた。
「本気で極妻一直線すね、先輩」
「極妻って。別にあたし組に入る気ないし」
「でも彼ピさん組の人なんですよね?」
「いゃ、そもそも暁が継ぐから」
「ああ、暁さん。彼もべっぴんでしたよねー。歳上の魅力全開って感じ」
「ひとまわり違うでしょ歳が」
「ですよねー。暁さん歳上な好きなイメージあるもんなぁ」
「なんの話してんのこれ」
「だからぁ、先輩が惚気全開すぎて草って話ですぅ」
「…………課題終わってないんでしょ」
「バレました?」
「バレバレですよ」
「手伝って先輩っ」
「…………暗くなる前には帰るよ?」
「あざーっす」
やけに馴れ馴れしくベタベタ懐くこの後輩。
人に散々いろいろ言っときながら自分ですでに極妻ってやつ。
高校生の頃に真中組若頭に身染められて。
卒業と同時に単身ヤクザの家に嫁いだ強者。
旦那様とはラブラブ新婚生活真っ只中。
あたしが懐かれてるのも全部、そんな経歴が原因だったりする。
「あーあすっかり暗くなっちゃって。お迎え大丈夫です?」
「んー。電話してんだけど出ない」
これ。
電車とかタクシーで帰ったらまた変に怒るんだろうな。
『当分ひとりにならないで』
とか言ってたし。
「もう少し待とうかな」
最近忙しいって言ってたし。
「したら乗ってきます?先輩ん家まで、全然送りますよ?」
「いやぁ、さすがにそれは」
組同士の縄張りとかあるし。
そんな些細なことで抗争とか発展されてもなぁ。
「大丈夫ですよ、大事な大事なお嬢送り届けるだけで抗争になんかなんないですって」
「えー」
「ってか電話鳴ってます?彼氏さんじゃないですか」
「…………ん」