第7章 地雷
「雅」
「何スか」
「朝もちっと早くお嬢帰さねーとみんなにバレっぞ」
組の所有してる賭博カジノバー。
ギリギリ違法ではないそれの取り締まり中、視線をルーレットへと向けたまま、ヤッさんが声を掛けた。
「は…………?や、え」
え。
もしかして。
あれを見たの?
顔真っ赤にしたぽやぽや莉央ちゃん、見られてたってこと?
え。
あの顔見られてた?
薄いワンピースの下、下着1枚の莉央ちゃんを?
見られてた?
「…………絶対、もう部屋泊めねぇ」
「そうしてくれ」
莉央ちゃんの朝帰り、めちゃくちゃハイリスクじゃん。
こっわ。
ありえねぇまじ。
あれ、見られてたとか。
「もうさ、おまえお嬢と家出れば?」
「…………家?」
「いやもうぶっちゃけさ、帰るタイミング迷うんだよな、こっちも」
「…………」
いや。
え。
「なん…………」
なんか、見た?
恐ろしくて聞けない。
見たとか言われた日にはもう殺意しか湧かねー自信、ある。
「まぁ、あれだ。一緒に住めば済んだで問題もあっかもだけど」
「…………」
問題?
あ。
駄目だ。
フリーズしそう、これ。
「問題て?」
「は?…………あ、ぃやなんでもない」
明らかに目を逸らして。
失言だったとでも言うように取り繕って、背を向ける先輩のスーツを掴む。
「暁、さんのこと…………?」
「ぃや、だから」
なんで目逸らすの。
なんで濁すんだよ。
「いつから、知ってたんスか、それ」
ため息ついて。
諦めたように発せられた言葉に血の気が下がるのがわかる。
「初めから、知ってた」
体温が、下がる。
「悪いな雅。みんな周知なことなんだわ」
「え」
「悪く思うなよ。…………おまえ今日もう帰っていいよ。その顔でここに立つな」
「…………っ」
駄目だ。
また。
眩暈がする。
吐き気がする。
地面が、柔らかい。
ぐにゃぐにゃする。