第7章 地雷
開店前の、店の中。
ママさんも女たちも気を利かせて俺と暁さんの、ふたりきり。
「雅」
ぎし、とソファを軋ませて。
暁さんが隣へと座る。
いや。
わざわざ隣に座る必要ねぇだろこれ。
す、て。
暁さんとの間に間を作れば。
暁さんの手が、髪へと触れる。
「本題!!入ってもらえませんか」
それを思い切り振り払って立ち上がった。
莉央ちゃんを知ったせいかな。
だめだ。
触られるだけでものすごい嫌悪感。
蓋なんて出来ないくらいに吐き気と眩暈が押し寄せる。
「…………莉央と寝たら俺はもう必要ねーか」
「ぃや、だから…………。もうほんと勘弁して」
吐きそう。
この空間にいるだけで。
この雰囲気、空気だけで眩暈がする。
「なんで。どーせ暇つぶしにちょうど良かっただけだろあんた。俺伝えましたよね、『お世話になりました』って。もともと組での俺の立場確立できるまでって約束だったし。もういい加減解放してくれよ頼むから」
「暇つぶしは、暇つぶしだよな。…………じゃぁ代わりに莉央になってもらうか、暇つぶし」
「…………」
一瞬で。
血の気が引くのがわかる。
何言ってんのこの人。
「…………莉央ちゃんに、なんかした?」
「おまえ次第かな、雅」
「っ」
吐き気がする。
「ものわかりいいな、おまえはほんと、かわいいよ」
ぐらぐらする。
地面がぐにゃぐにゃに揺れて。
立ってらんない。
ああほんと。
クソみたいな人生そう簡単に変えられるわけねぇか。