第7章 地雷
「莉央ちゃーん、いってらっしゃーい。必ず連絡してね」
運転席から見える莉央ちゃんが小さくなっていくのが嫌で。
外へと出て車越しに手を振った。
恥ずかしそうに、小さくながらもちゃんと手を返してくれるようになった。
それから。
毎日車に乗ってくれるようになった。
小さなそしてほんの些細な変化だけど。
怖いくらいに毎日が幸せ。
「…………見てりゃわかるわ」
「ほーんと雅さん、ご機嫌っスね。店の嬢たち泣きますわこれ」
「何言ってんだよ奴ら暁さんのっしょ」
「いやそりゃ頭選びたい放題っスけどぉ、てか奴らて笑」
「莉央ちゃん以外興味ねぇ」
ふーって。
タバコふかしつつスマホ確認。
うんうん。
まだちゃんと構内にいるな。
「すっかりスマホ依存症かよ。あとその顔締めろ。そろそろ暁さんくっぞ」
「…………」
「顔。嫌そうにすんな。あからさまなんだよ」
「…………最近ほんと、人間らしくなりましたね雅さん」
「…………そうか?」
「嬢たちはまるの、ちょっとわかる。俺も雅さんに抱かれてーもん」
サングラスを掛け直しながら発せられた悠介の何気ない言葉に一瞬足が止まる。
いや、別に深い意味はないのもわかる。
『そーゆー意味』を含んではいないことも。
わかるのに。
だめだな、敏感になりすぎてる。
暁さん来るからかな。
意識しすぎだろって。
「雅。車来た。遅れんなよ」
「…………っス」
『話がある』。
どーせ碌な話じゃないことは明確で。
面倒事は避けたいし、適当に誤魔化してバックれようと思った。
なのに。
直々にお出ましですか。