第1章 愛して欲しい
「柳瀬、ねぇ今…………、何、飲ませたの」
「…………体に害はないよ」
「何、飲ませたの?」
今。
あたし飲んだ。
柳瀬の唾液が潤滑油みたいに、するって。
違和感もなく。
飲み込んだ。
あれ。
あれは。
何?
「だって莉央ちゃんこうでもしないと逃げるでしょ」
あ。
やばい。
柳瀬の、顔。
これ。
「莉央ちゃんやさしーね。俺にご飯食べさせるためにあんなに警戒してた車にも乗ってくれて。あんなん、噛めばいいのに絶対歯、立てないし。ほんと好き。そーゆー馬鹿なとこ」
後部席に座ったまま力の入らない身体に焦りつつも。
柳瀬がシートベルトをつける様を、目で追うくらいしか出来ない。
頭、モヤモヤする。
駄目だこれ。
睡眠薬。
め。
あけてらんない…………。
—————————プツン。
あ、れ。
なんか頭、いた…………。
てか今、なん…………!?
「なに、なん、つめた…………っ?」
何時か見ようと目を開いたはずなのに、真っ暗で。
身体を動かそうとすれば。
両手に違和感。
「何…………っ?」
手。
捕まってる。
ガチャガチャ言うだけで全然動かないし、変わらず真っ暗な視界。
目を覆う布みたいな感触。
何。
なんで。
「や、…………っぁ?」
冷たい感触が確かにあったはずなのに。
何故だか胸が熱い。
息が。
苦しい。
「柳瀬…………っ、柳瀬いるんでしょ?」
なんで何も。
喋んないの。
やだ。
これ怖い。
柳瀬だよね?
柳瀬、いるの?
ほんとに?
さっき身体にかけられた液体を指先に纏わせて。
何か、が。
胸へと触れた。
「…………っ、ん」
待って。
あたし。
今。
これ。
服、着てない?